インシデント

  • 2014/05/22

技術流出の被害想定額は1,000億円、技術流出は技術で防止可能

東芝が保有する、スマートフォンなどに使用される半導体メモリーの研究機密情報を、韓国の半導体大手企業SKハイニックス社に不正に渡した疑いがあるとして、東芝の提携先である米サンディスク社日本法人の社員だった男が3月13日、不正競争防止法違反の容疑で警視庁に逮捕されました。

東芝は同日東京地方裁判所に、SKハイニックス社に対する損害賠償を求める民事訴訟を起こしたと発表しており、報道によれば東芝の逸失利益は1,000億円強とされています。

日本の製造業の保有する優れた技術が海外に流出するリスクは、以前から認識され、関係者から警鐘が発せられていました。3年前の2011年には特許庁調査部会による「人材の移動による技術流出に係る知的財産の在り方に関する調査研究報告書」という、諸外国の実態や法的対策、日本の現状などを調査した150ページを超える大部のレポートが公開されています。

こうした海外への技術流出問題は、日本の大手製造業の業績停滞や、それに伴う技術者のリストラなどの労働環境の悪化、加えて中国や韓国など東アジア諸国の経済的台頭とセットで語られますが、そもそも業務のIT化によって、こうした不正や産業スパイ行為のハードルが著しく下がっているという単純な事実を忘れてはいけません。

企業の業務がIT化される前の時代であれば、知的財産は紙に記載され、ファイルに綴じられて、カギのついたキャビネットに保存されていました。こうした時代に情報を持ち出すには、人目を盗んで忍び込んで、小型カメラで撮影するなど、一昔前の産業スパイのようなものものしい準備や機材が必要でした。

東芝の情報を韓国企業に渡した福岡県内に住む52歳の男は、2007年から2008年にかけて、三重県四日市市の東芝の工場で、正規のIDでサーバにアクセスし、絶縁膜などに関する営業秘密を、USBメモリにコピーすることで情報を持ち出しています。USBメモリは文房具店やコンビニでも安価に販売されていますし、正規のIDでログインしているのですから、いかに不正行為のハードルが低くなっているかがわかるでしょう。

こうした問題は、雇用契約や秘密保持契約の見直しや厳格化、労働環境の改善、今回の東芝のような断固たる対応など、いくつもの方法で取り組む必要があります。しかし同時に、たとえばやりとりするデータをデフォルトで暗号化するなど、抜本的な技術対策が、今後重要となっていくことは間違いないでしょう。今回の事件は、許可したUSBメモリ以外挿せなくするような、ごくありふれたセキュリティソリューションがあれば、防ぐことができたかもしれません。契約や労働モラルの改善は当然ですが、技術流出の多くは技術対策で防止可能なのです。
<記事提供元:株式会社イード>


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