インシデント

  • 2015/04/16

企業秘密の海外漏洩を厳罰化する法改正案、閣議決定

日本政府が2015年3月13日、不正競争防止法の改正案を閣議決定しました。この改正案は国会の審議を経たのち、早ければ今年中にも施行される見通しです。

今回の改正の目玉は、「海外への企業秘密の漏洩」を厳罰化した点にあります。たとえば海外企業が日本企業から機密情報などを盗み出した場合に課せられる罰金は、これまでの「最高3億円」から「最高10億円」に吊り上げられています。それと同様に、日本企業から海外へ情報を盗み出した個人への罰金も「最高1千万円」から「最高3千万円」に厳格化されました。

このような改正案が練られた背景には、海外企業による産業スパイ事件の多発があります。昨年の3月には、「東芝の半導体メモリーに関する研究機密情報を、韓国の半導体企業に譲渡した疑い」で、東芝の提携先企業の元社員が逮捕されました。この事件で盗まれたような機密情報は、国の経済をも支える知財でもあります。今回の改正は、その財産を保護するために、政府が本格的に乗り出したことの現れでしょう。

では果たして、このような厳罰化に効果はあるのでしょうか。その点には少々疑問が残ります。先の東芝の事件を挙げるなら、この情報漏洩によって東芝が受けた損失は1,000億円にのぼるとみられています。実際に情報を盗み出した企業が、どれほどの利益を得られたのかは分かりません。しかし罰金が10億円に引き上げられた程度で、これほどうまみのある情報の盗難が抑制できるとは考えがたいものがあります。

ここで、米国の経済スパイ法(Economic Espionage Act 1996)を参照してみましょう。この法は、米国の企業機密情報を利益目的で国外へ持ち出した企業に最高1千万ドル(約12億円)の罰金を、そして個人には最高50万ドル(約6千万円)の罰金と最高15年の懲役刑を課しています。大まかに表現するなら、今回の日本の改正案は、この法に少し近づいたものと言えそうです。

しかし、それを1996年から施行している米国では現在、産業スパイによる企業機密の海外流出が、日本以上に深刻な問題となっています。昨年には米国司法省が、「サイバー攻撃を通し、2006年から米国大手企業から機密情報を盗み続けていた21世紀の強盗」として、中国人民解放軍の5人を指名手配しました。

このような産業スパイの実行犯たちは、おそらく「処罰が厳格であるか寛大であるか」など考慮すらしないでしょう。私たちは、今回の法改正が少しでも犯罪の防止に繋がることを願いつつも、やはり自社の機密情報は自社で守るために、弛まぬ努力を続けなければなりません。
<記事提供元:株式会社イード>


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