インシデント

  • 2015/05/28

通期で107億円の赤字。情報漏洩事件の影響

今年5月1日、ベネッセホールディングスが2015年3月期の連結決算を発表しました。純損益は107億円の赤字で、9月に同社の中間決算が発表されたときの見通し(10億~90億円の純損益)を上回る損失額となりました。なお、同社が1995年に上場して以来、通期での赤字を発表したのは今回が初めてのことです。

2014年3月期の連結決算で同社が発表した数字は199億円の黒字でした。つまり昨年比で「300億円以上のマイナス」となります。この途方もない損害が、昨年の日本で大きな話題となった顧客情報大量流出事件の影響を受けたものであることは、疑いようもありません。

この漏洩事件が同社に与えた主な損害としては、同社の主力である「こどもちゃれんじ」などの通信教育の会員数が減少したことが筆頭に挙げられます。同社は前回の中間決済で、「情報流出が発覚した2014年7月から9月、新規会員は前年同期に比べて6割減少した」「10月時点での国内の通信講座会員数は、昨年比で7.1%減少した」と発表しました。つまり、新規顧客の獲得が困難になっただけではなく、事件を重く見て退会した顧客の数も、決して無視できない数となったのです。

この事件の影響は、利益の圧迫だけに留まりませんでした。同社は、顧客へのお詫びや情報管理の強化などの対応に、約260億円が投じられたことを発表しています。260億円の内訳は、顧客へのお詫びの費用が約200億円、お詫び文書発送費、顧客からの問い合わせ対応費、個人情報漏えいに対する調査、情報セキュリティ対策費などがあわせて約60億円とのことです。このように顧客情報の漏洩事件は、単にブランドイメージを損なうだけではなく、事後の様々な対応に多大な費用を注ぎ込むことになります。

昨年は、米国でも大規模な顧客情報の漏洩事件が続々と報じられました。特に大手小売店のTargetやHome Depotで起きた事件は、顧客のカード番号が大量に漏洩したこともあり、ベネッセの事件をも凌ぐほどの騒動を巻き起こしました。

Target社の報告によると、事件後の同社の四半期純利益は5億2000万ドルで、それは昨年の同四半期と比較して「46%の減少」でした。また、この事件に関して報じたThe New York Times誌は、「実際にTargetが受けた損益は計り知ることができない。サイバー攻撃による損失の可能性はあまりにも未知数かつ莫大だ」という専門家の意見を掲載しています。

顧客の個人情報の漏洩が企業の利益に直接的な被害を与えること、信頼を取り戻すまでには多くの費用がかかることは、これらの漏洩事件によって示されてきた通りです。それと同時に、「その損害の大きさは、関係者にさえ正しく予測できていなかった」ということも、今回のベネッセの決算報告によって明らかになったと言えるでしょう。
<記事提供元:株式会社イード>


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